塗装ブースのピットは塗料カスや汚水が溜まりやすい箇所です。放置するリスクと清掃の基本的な考え方を紹介します。
塗装ブースのピットとは、ブースの種類やメーカー、排水・循環水の方式によって構造が異なる設備のひとつです。ピットを備えた湿式塗装ブースでは、塗料ミストを捕集する水や洗浄水などを受けるスペースとして機能する場合があります。すべての湿式ブースに同じ形状のピットが設置されているわけではなく、床下に設けられるケースもあれば、別の位置に設けられるケースもあります。導入している設備の構造については、まずメーカーの仕様を確認しておくことが大切です。
湿式塗装ブースでは、塗料ミストを水で捕集する方式が採用されていることがあり、その過程で捕集された塗料成分が水中で凝集・沈降し、スラッジとしてピット内に堆積する場合があります。この沈殿物は、放置すれば自然に消失するとは限らず、塗料の種類や使用する処理剤の成分によって挙動が異なりながら、徐々に堆積が進んでいくことがあります。稼働状況や循環水の管理状態によっても堆積のスピードは変わってくるため、状態を継続的に確認しておく姿勢が求められます。
ピット内に塗料カスやスラッジ、循環水などが蓄積すると、汚れや臭気の原因となる場合があります。塗料には有機溶剤や樹脂、顔料などさまざまな成分が含まれ、循環水に処理剤が使われているケースもあるため、発生するにおいの種類や強さは使用している塗料や設備の管理状態によって異なります。また、汚れの蓄積によって排水や循環水の処理に支障が生じる可能性もあるため、日頃から状態を定期的に確認しておくことが重要です。
ピットの構造がブースの吸引経路や水流、エアフローに関係している場合には、汚れの蓄積が空気の流れに影響を及ぼす可能性があります。ただし、これはすべてのピットに共通する現象ではなく、設備の方式や配置によって影響の有無や度合いが変わってきます。排気性能そのものは、フードやダクト、ファンなど局所排気装置全体の状態によって左右される部分が大きいため、ピット単体の汚れとあわせて設備全体の点検状況を把握しておくとよいでしょう。
有機溶剤業務を行う場合には、有機溶剤中毒予防規則に基づき、作業内容に応じた換気設備や局所排気装置に関する規定が適用されます。同規則第20条では、局所排気装置について1年以内ごとに1回の定期自主検査を行うことが定められており、検査項目にはフードやダクト、ファンの損傷、じんあいの堆積状況、吸気・排気の能力などが含まれます。この定期自主検査は局所排気装置を対象としたものであり、ピット単体に対して同様の検査義務が定められているわけではない点には注意が必要です。また、有機溶剤作業主任者の職務として、局所排気装置等を1か月を超えない期間ごとに点検することも別途規定されています。
参照元:e-Gov「有機溶剤中毒予防規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000036)
ピット清掃を始める前には、使用している塗料や洗浄剤のSDS(安全データシート)を確認し、必要な呼吸用保護具や手袋、保護衣などを選定することが望ましいです。ピット内には塗料や有機溶剤、洗浄剤、スラッジなど複数の物質が存在する可能性があるため、一律に特定の保護具を用意すればよいというものではなく、成分や濃度、作業環境に応じた判断が求められます。あわせて、清掃に使用する道具や排水・廃棄物の受け入れ体制についても、事前に整えておくと安心です。
清掃の具体的な手順は、循環水式か否かなど設備の方式によって異なります。水を排出したうえで堆積物を取り除く流れが一般的とされる場合もありますが、排水やスラッジをそのまま処理してよいかどうかは、設備の仕様や排水処理方式によって判断が必要です。洗浄後の水についても、どのように処理するかをあらかじめ検討しておく必要があり、自己判断で進める前に設備メーカーや管理担当者に確認しておくことをおすすめします。
清掃の頻度について、一律の基準が定められているわけではありません。塗装量や塗料の種類、塗料ミストの発生量、湿式・乾式などの方式、循環水の量、スラッジの堆積速度、設備メーカーが示すメンテナンス基準など、複数の要因によって適切な頻度は変わってきます。日常点検の中で堆積量や水質の状態を確認しながら、自社の稼働実態やメーカーの推奨条件に沿って清掃時期を設定していくことが、無理のない管理につながります。
ピットの深さや構造によっては、床の表面を拭き取るだけでなく、内部に人が入って清掃する作業になる場合があります。その際には、換気状態や酸素濃度、有機溶剤等の濃度、墜落・転落の防止、出入りのしやすさ、化学物質へのばく露、ポンプや電気設備への配慮、清掃中のブース停止など、確認すべき点が多岐にわたります。ピット内への立ち入りが必要な場合は、設備構造や作業環境に応じた安全確認を行い、必要に応じて専門業者へ依頼することが望ましいです。
ピット清掃は単独で行うのではなく、フィルター交換やファンの点検といった他のメンテナンス項目とあわせてスケジュール化しておくと管理がしやすくなります。年間の点検計画にあらかじめ清掃のタイミングを組み込んでおくことで、対応漏れを防ぎやすくなります。担当者や実施時期を明確にしておくことも、継続的な運用のうえで役立つポイントです。
ピットの汚れが著しい場合や、社内での対応が難しい規模の堆積物が確認された場合には、専門業者への依頼を検討する選択肢があります。塗料スラッジや廃液などは、性状や処理方法によって廃棄物として適切な処理が必要になる場合があるため、法令に沿った処理体制が整っているかどうかを確認しておくと安心です。自社で対応する範囲と、業者に任せる範囲をあらかじめ整理しておくことで、無理のない運用につながります。
塗装ブースのピットは、設備の方式によって構造や管理方法が異なる部分です。汚れを放置すると臭気の発生や排水処理への支障、排気・換気機能への影響につながる可能性があるため、日頃から状態を確認しておく必要があります。清掃の手順や頻度、立ち入り作業の安全確認については、一律の基準に頼るのではなく、使用している塗料やSDS、設備メーカーの仕様に沿って判断していくことが大切です。判断に迷う場合は、専門業者やメーカーへの相談も含めて検討していくとよいでしょう。
このサイトでは業界・部品別におすすめの塗装ブースメーカーを厳選して紹介しています。併せて参考にしてください。
各業界や部品に対応する
中小工場におすすめな
塗装ブースメーカー3選
オーバースペックにならずコストを抑えて塗装ブースを導入できるよう、ラインナップが豊富だったり、オーダーメイド対応をしている塗装ブースメーカーを厳選。その中から、導入後も満足できるよう、各業界・部品別におすすめの塗装ブースメーカーを紹介します。



■選定基準:2024年2月16日にGoogleにて「塗装ブース メーカー」と検索した際に表示される塗装ブースメーカーを22社調査しました。その中でも、塗装ブースの商品の種類を10種類以上揃えるか、あるいはオーダーメイド生産と公式HP記載されていた会社の中で、下記の基準でピックアップしました。
・パーカーエンジニアリング…公式HP上で、塗装ブースを自動車業界に導入した事例の掲載が最も多い。
・ANDEX…公式HP上で、航空機や鉄道の大型塗装ブースを導入した事例の掲載が最も多い。
・吉田工業…公式HP上で、農機具などの小物の塗装ブースを導入した事例の掲載が最も多い。
※2024年2月編集チーム調べ